近年、高齢者の一人暮らしは増加傾向にあります。離れて暮らす高齢の親が一人で生活していると、さまざまな不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
- 家事や買い物が負担になっていないだろうか?
- 詐欺や防犯対策は十分にできているだろうか?
- 体調を崩していないだろうか?
- 外出や地域との交流が減り、孤立していないだろうか?
高齢者の一人暮らしで起こりやすい問題を知り、適切な対策を講じることで、安心して自立した暮らしを続けやすくなります。本記事では、高齢者の一人暮らしで起こりやすい困りごとや対策について解説します。
一人暮らしの高齢者は増加している?
内閣府「令和7年版高齢社会白書」によると、2023年(令和5)時点で65歳以上の人がいる世帯は全世帯の約半数を占めています。
また、厚生労働省「国民生活基礎調査の概況(2024年)」によれば、65歳以上で一人暮らしをしている単身世帯は年々増加しています。単身世帯の割合は、男性が36.0%、女性が64.0%でした。年齢構成を見ると、男性は70~74歳、女性は85歳以上が最も多くなっています。
さらに、将来的に一人暮らしになる可能性がある「夫婦のみの世帯」や、「親と未婚の子のみの世帯」も増加傾向にあります。家族や身近な支援者がいない高齢者は、今後さらに増えることが予測されています。
高齢者の一人暮らしは、決して特別なケースではありません。買い物や食事、通院などの日常生活に関する困りごとは、多くの人が老後に向き合う可能性のある課題といえるでしょう。
参考
令和7年版高齢社会白書(全体版)|内閣府
2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況|厚生労働省
高齢者の一人暮らしで困ること7選

高齢者の一人暮らしでは、日常生活のさまざまな場面で困りごとが生じます。小さな変化を放置すると健康悪化や孤立につながる可能性もあるため、起こりやすい7つの課題を確認しておきましょう。
①食事の準備が難しい
高齢になると、体力や身体機能の低下によって、買い物や食事の準備が負担になる場合があります。長時間の調理が難しくなることもあるでしょう。
一人分の食事を毎日作ることを面倒に感じ、菓子パンやコンビニ弁当、インスタント食品で済ませる高齢者も少なくありません。
近年は配食サービスも充実していますが、味が口に合わない、食べ慣れた料理ではないなどの理由から、継続利用が難しいケースもあります。
これらの結果、栄養バランスが偏り、筋力や体力の低下を招くおそれがあります。さらに、フレイルやサルコペニアのリスクが高まり、外出や日常生活が困難になる悪循環に陥るおそれもあります。
知っておきたい!フレイルとサルコペニア
フレイルとは、加齢にともない心身の活力が低下した状態です。健康な状態と要介護状態の中間にあたる段階ともいわれます。サルコペニアは「加齢によって筋肉量が減少し、筋力・身体機能が低下した状態です。
②病気や認知症のサインに気づきにくい
高齢者の一人暮らしでは、体調の変化や病気のサインに気づきにくい点も課題です。家族と離れて暮らしている場合、食欲の低下や体重減少、生活習慣病の症状などを見逃してしまうおそれがあります。
また、認知症の初期には「しまい忘れが増える」「身だしなみを気にしなくなる」といった変化がみられることがあります。しかし、一人暮らしでは日常の様子を確認する機会が少ないため「認知症ではないか」と思われる言動に周囲が気づきにくい点も問題です。
さらに、高齢になると通院そのものが負担になってしまいます。一人で病院へ行くことが難しく、受診を後回しにした結果、病気の発見や治療が遅れる可能性もあるでしょう。
認知症と間違えられやすい病気に「うつ」や「せん妄」があります。いずれも専門医への相談が必要です。
③転倒時のリスク
高齢者の転倒は、骨折や頭部外傷などの大けがにつながりやすく、要介護状態や寝たきりの原因になることもあります。加齢によって筋力やバランス機能が低下すると、わずかな段差でも転倒する可能性があるため注意が必要です。
一人暮らしの場合、転倒してもすぐに助けを呼べない可能性があります。発見が遅れると、症状の悪化や回復の遅れにつながるおそれもあるでしょう。
東京消防庁によると、高齢者の転倒事故の約6割は自宅で発生しています。そのため、自宅内の安全対策が欠かせません。例えば、床に物を置かない、電源コードを歩く動線上に配置しないといった工夫が大切です。
また、万が一の場合に備えて携帯電話を持ち歩くほか、自治体が実施している緊急通報サービスの利用を検討しておくと安心でしょう。
参考:たった一度の転倒で寝たきりになることも。転倒事故の起こりやすい箇所は?| 政府広報オンライン
④社会的な孤立・孤独感/生きがいが感じられない
高齢者の一人暮らしでは、定年退職などをきっかけに自宅にこもりがちになり、社会的に孤立して孤独感を強めることがあります。特に、家族や友人、近所の人との交流が減ると、社会とのつながりを失いやすくなるため注意が必要です。
社会とのつながりの低下は、フレイルの最初の入口ともいわれています。外出する機会が減ると、筋力や体力が低下し、さらに外出がおっくうになるという悪循環に陥るケースも少なくありません。
こうした状態が続くと、趣味や地域活動への意欲も低下して、日々の暮らしのなかで生きがいを感じにくくなる可能性もあります。
「誰とも会話をしない」「近所づきあいがない」「困ったときに頼る人がいない」といった状態が続いている場合は、社会的孤立のサインと考えられるでしょう。
⑤家の管理やメンテナンスが難しくなる
高齢者の一人暮らしでは、体力や身体機能の低下により、家の管理やメンテナンスが負担になることも少なくありません。例えば「庭の草むしりができない」「2階の掃除が難しく、物置状態になっている」といったケースがみられます。
換気や掃除が不十分になると、室内にカビやダニが発生しやすくなります。こうした住環境の悪化は、ぜんそくやアレルギーなど健康面への影響につながる可能性もあるため注意が必要です。
また、高い場所の掃除や電球交換を無理に行うと、転倒やけがにつながるおそれもあるでしょう。
⑥金銭管理が難しくなる
一人暮らしの高齢者は、食費や水道光熱費、日用品費など、生活に必要な支出をすべて自分で管理しなければなりません。しかし、加齢にともない判断力や記憶力が低下すると、支払い期限を忘れる、必要以上に買い物をしてしまうといった問題が生じるおそれがあります。
ATMに通帳やキャッシュカードを置き忘れる、現金の保管場所を忘れてしまうなど、金銭管理に関するトラブルにも注意が必要です。
また、身近に相談できる家族や知人がいない場合、特殊詐欺やネット詐欺などの犯罪に巻き込まれやすくなる傾向があります。不審な電話や訪問があった際に、すぐ相談できる相手を確保しておくことが大切です。
⑦災害時の対応や避難が困難になる
日本は地震や台風、豪雨などの自然災害が発生しやすい国です。しかし、高齢者の一人暮らしでは、災害時に適切な行動を取ることが難しい場合があります。そのため…
- とっさに避難の判断ができない
- 誰に連絡すればよいか分からない
- 情報収集が遅れ、避難のタイミングを逃してしまう
といったリスクが考えられます。さらに、足腰が弱っている場合は、一人で避難所まで移動することが難しい場合があります。特に、夜間や悪天候時の避難は身体への負担も大きく、避難行動そのものが困難になる可能性もあるでしょう。
高齢者の一人暮らしで困ることの対策4選

高齢者の一人暮らしによる困りごとは、事前に対策を講じることで軽減できる場合があります。ここでは、高齢の親が安心して自立した生活を続けるために、家族が取り入れたい4つの対策を紹介します。
見守りサービスを活用する
高齢者の一人暮らしに不安を感じる場合は、見守りサービスの活用を検討するのもひとつの方法です。
見守りサービスには、自治体が提供する行政サービスと、民間企業が提供するサービスがあります。サービス内容はさまざまで、生活スタイルや必要な支援に応じて選択できます。
- 玄関まで来て声掛けをする
- 食事をリビングまで届ける
- ごみ回収時に声掛けをする
また、利用者に異変がみられた場合に、ケアマネジャーや家族へ連絡する仕組みを備えたサービスもあります。高齢者本人の状況や希望に合わせて活用することで、離れて暮らす家族も安心しやすくなるでしょう。
高齢者互助コミュニティなどに参加する
高齢者の一人暮らしでは、意識的に外出の機会を作ることが大切です。地域の高齢者互助コミュニティやサロンに参加することで、社会的孤立や孤独感の解消につながる可能性があります。
また人との会話は、脳の機能を維持するために役立つとされています。定期的なコミュニケーションは、認知症予防につながる可能性も期待できるでしょう。
外出や地域活動への参加は、身体を動かす機会にもなります。筋力や体力の維持につながるため、フレイル対策としても有効です。
シニア向けのボランティア活動に参加し、社会貢献を通じて新しい生きがいを見つけるのも良いでしょう。
介護保険を活用する
高齢での一人暮らしに不安がある場合は、まず地域包括支援センターや自治体の窓口へ相談してみましょう。介護や生活に関する悩みを相談でき、状況に応じた支援につなげてもらえます。
公的な介護保険サービスを利用する場合は、原則として要介護・要支援認定が必要です。自宅で暮らしながら利用できる訪問サービスでは、買い物や掃除、洗濯などの日常生活の支援を受けられます。
また、訪問看護では、健康状態の確認や衛生管理に関する助言などを受けることも可能です。必要な支援を活用することで、自立した生活を続けやすくなるでしょう。
成年後見制度を活用する
高齢者の一人暮らしに不安がある場合は、成年後見制度の活用を検討するのもひとつの方法です。成年後見制度とは、判断能力に不安や心配がある人を支援するために、後見人が契約や手続きを行う制度を指します。主な支援内容は次の通りです。
- 財産管理(不動産や預貯金などの管理、相続手続など)
- 身上保護(介護・福祉サービスの利用契約や施設入所・入院の契約締結など)
成年後見制度には、すでに判断能力が不十分な人を対象とする「法定後見制度」と、将来に備えてあらかじめ後見人を決めておく「任意後見制度」があります。判断能力が十分にあるうちから準備しておくことが、将来への安心につながるでしょう。
離れて暮らす家族ができることは?

高齢者の一人暮らしを支えるためには、家族の見守りやサポートが欠かせません。日頃からコミュニケーションを取り、必要に応じて支援サービスや機器を活用することが大切です。ここでは、離れて暮らす家族が実践しやすい3つの方法を紹介します。
近居を検討する
高齢の親が一人暮らしをしている場合は、近居を検討するのもひとつの方法です。
近居とは、親世帯と子世帯が互いに行き来できる距離で暮らすことを指します。同じ市区町村内や、30~60分程度で移動できる距離を目安とすることが多いです。車や自転車、徒歩などの移動手段によっても異なるでしょう。
近居は、日常での行き来がしやすくなるだけでなく、緊急時や災害時に駆け付けやすくなる点もメリットです。無理のない距離を家族で話し合いながら決めるとよいでしょう。
定期的に連絡や訪問をする
離れて暮らしていると、親の生活状況を把握しにくくなります。そのため、電話や訪問を通じて定期的に様子を確認することが大切です。
連絡を取る際は「体調に変化はないか」「部屋が散らかっていないか」「不安や寂しさを感じていないか」などを確認するとよいでしょう。
高齢者が長時間誰とも交流せずに過ごすと、社会的孤立や孤独感につながるおそれがあります。直接会って話すことが理想ですが、電話やメッセージアプリでコミュニケーションを取ることも、脳への刺激につながる可能性があるでしょう。
見守りロボットを活用する
見守りロボットは、高齢者の一人暮らしを支援するさまざまな機能を備えています。離れて暮らす家族が、日常生活の状況を把握したい場合にも役立つでしょう。
見守りロボットの主な機能には、次のようなものがあります。
搭載されている機能はモデルによって異なります。高齢者本人の生活スタイルや家族の希望に合わせて、必要な機能を備えた見守りロボットを選びましょう。
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まとめ
高齢者の一人暮らしでは、食事の準備や金銭管理、転倒時の対応など、さまざまな困りごとが生じる可能性があります。しかし、見守りサービスや介護保険、見守りロボットなどを活用することで、こうした課題を軽減できる場合があります。
また、離れて暮らす家族が定期的に連絡や訪問を行うことも大切です。一人暮らしの高齢者が社会的に孤立しないためにも、今後の暮らし方や支援について家族で話し合う機会を設けてみてはいかがでしょうか。
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